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居心地の原則

建築

先日、何気なく見ていたテレビでデザイン評論家の柏木博氏が出演されていました。そこで、デザインとは何か?ということについて、ヘンリー・ペトロスキーのデザイン論を引用しながら論じられていました。それは、非常に明快で興味深いものでした。

デザインするとは、身の回りを居心地の良い状態にするという行為の全てを指し示す。例えば、ピクニックに出かけて野原でお弁当を食べるとき、座るのに適した適当な起伏のある場所を探し、目の前を人が頻繁に通らない落ち着ける場所を探し、日当たりの良い場所、又暑い時期には日の当たらない涼しい木陰を探す、等の誰もがするであろう行為は既にデザインの始まりである。又、その行為には無意識のうちに居心地の良い状態を求めるという心理、つまり居心地原則が働いている。というものでした。

このことは次元は違いますが、極論すると、我々がダイニングルームを設計するときの頭の働かせ方と全く同じです。ご飯を食べるのに快適な場所を敷地の中で探し出して、壁・床・天井で囲って、更に快適にしようとしているだけなのです。我々の建築設計の仕事もデザインという行為に含まれるのですが、非常に複雑な行為の集積であることから、ときとして建築設計とは何なのか?ということが分かりにくくなりがちですが、柏木氏の言う「居心地を良くする為の行為である」と言えば、非常に分かりやすいのではないかと思いました。

ただ、それは誰の居心地の良さなのか?という問題が加わることによって、考える範囲が広がってゆきます。私、あなた、みんなの居心地の良さはそれぞれ違いますし、時代や地域や、そこでする行為によっても違ってきます。そのあたりの解決の仕方によって、上手い設計と、そうでない設計、が生まれるのではないかと思います。