Learn

ハウスメーカーや工務店と、設計事務所に家づくりを依頼した場合の違いは

家づくりの依頼先は「設計事務所」の他に「ハウスメーカー」「工務店」という選択肢があります。
ご相談に来られる方から度々聞かれるのが「設計事務所に依頼すると何が違うのか?」というご質問です。
今回はそのご質問に対して、当事務所が普段仕事をしていて感じていることを簡単に分かりやすく解説したいと思います。

【1】設計に対する自由度が高いこと

まず、要望と予算をお聞きして、敷地の形状や周辺環境を読み込み、法的な制限などを調べてから設計に入るのですが、その場合様々な手法を用いて最適な案を模索します。完成した姿を思い浮かべながら、工事の方法(作り方)を考えて、素材を選び図面を書いていきます。その中で、様々な手法の選択について制約が少なければ少ないほど、依頼された要望に一致する良い案が作れると考えています。また、周辺環境に合ったプランや素材なども自由に考えて選べることも大切なことです。

ハウスメーカーの特徴は、量産可能な複数のユニットがあらかじめ用意されていて、なるべくそのユニットの組み合わせから外れないようにしつつ顧客の要望に一致するような案を目指すという点にあります。本来、ハウスメーカーの成り立ちが「量産可能な標準的形式の住宅」というものを考えることからスタートしているからです。標準メニュー以外の要望に対しては、オプションで対応していますが、追加費用が高額になりがちです。あらかじめ想定された標準的な敷地や条件などと一致した時はメリットを発揮します。しかし、現実には多くの要望や敷地条件を読み解いてゆくと、ライフスタイルや好みも様々なので、住宅は標準化という手法のみでは個別の要望に十分に対応することは難しいのかもしれません。

工務店については、注文住宅を中心に工事を行っている会社であれば、基本的に自由な設計が可能だと思われます。ただ、自社の中に総合的なデザイン能力のある建築士が在籍している工務店はまだまだ少ないと感じています。理由は様々ですが、基本的に工務店は施工(工事)を主な業務として考えているので、設計という業務はどうしても後回しになるという性質があるからだと思います。これは、組織の構造的な制約になります。

【2】デザイン性、空間性が高いこと

デザインとは何か?という問いに対して私は「デザインとは条件を整理すること」だと思っています。
それは、論理的なものもありますが、感覚的なものも含めて整理するということです。
例として、太陽光を取り入れる為に窓を付ける、という一つの行為を考えてみます。非常に簡単なことに思えますが・・・・

窓の大きさは?
窓の高さは?
窓の形状は?
開閉操作に問題は無いか?
窓の外にどのような風景が見えるのか?
隣家の視線は気にならないか?
カーテンは必要か?
風が上手く通り抜けるか?
枠の形状は?
眩しすぎないか?
暗すぎないか?
朝、昼、夕方、夜のイメージはどうか?
部屋の大きさに対して適当か?
隣接する窓とのバランスは適当か?
外観における窓のバランスは適当か?
綺麗に光りが差し込むか?
空間をより良く見せることが出来るか?

など多くの検討事項があります。それらを一つ一つ整理して、最もバランスが良く空間に合った「窓」を考えることは熟考を要することです。
その他にも、扉や家具、壁、床、天井など全ての部位に対して最適なバランスについて総合的に検討を行い、形状や機能を整理することで少しずつデザイン性が感じられるようになり、豊かな空間が生まれます。もちろん、2次元では無く、3次元のCGや模型を数多く作って検討を行います。

これだけのことを、実際に考え感じながらデザインすることは、多くのエネルギーと能力を必要としますが、気持ちの良い豊かな空間をつくる為には必要な作業だと思っています。

【3】コストバランスが良いこと

コストパフォーマンスを良くするコツとして、優先順位を整理してお金を掛けるべきポイントを絞る。という考え方があります。
優先順位の低いところは徹底的に無駄を省いてシンプルにつくることにより、トータルのコストを低くおさえるというものです。この手法も実際は非常にバランスが難しく、コストを優先するあまり削ってはいけない部分まで全てカットしてしまい、残念な住宅が出来上がってしまう可能性があります。
それを避けるには、空間の中で最も大切な要素は何か?を理論的にも感覚的にも、しっかり把握しながらコストダウンをしなくてはなりません。削ってはならない部分と、削っても大きな問題にならない部分をケースバイケースでしっかり見分ける力が求められるのです。それも「デザイン=整理すること」の1つだと考えています。

そして、様々な選択肢の中からベストな手法、工法を用いて進めていくためには、上記の(1)「設計に対する自由度が高い」ということも生きてきます。又、コストダウンした後であっても(2)「デザイン性、空間性が高いこと」が感じられるように、空間の中の最も大切な要素を把握しながらまとめます。

よって、最終的には満足度において大きな違いが生じるのではないかと考えています。