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良い設計事務所とは?

設計事務所を選ぶとき、作風や考え方に共感出来たり、魅力を感じたりすることや、設計者を人として信頼できると思えることは最も大切なポイントですが、今回は、一般的な例として、質の高い設計事務所の条件について書きたいと思います。

■設計事務所の仕事

まず、設計事務所の仕事というものを、ものすごく簡単に説明しますと、

(1)クライアントと打合せを行い
 ↓
(2)最善の建築計画(プラン)を作り
 ↓
(3)そのプランを法律に適合させ
 ↓
(4)工事価格が適正かどうかを見極め
 ↓
(5)工事が正しく行われていることをチェックする

という仕事です。また、重要なのは不動産屋や工務店(ゼネコン)と利害関係に無い中立的な立場で、クライアントの利益を守る為に仕事を進めることを基本としていることです。特に(4)と(5)は中立的な立場でないと出来ない部分です。業者と利害関係にあると決定権が少なく、チェックが甘くなります。

そして、要求される重要な能力は

(A)設計能力
要求された条件に合い、快適な建物を設計する為の知識、発想力、実現力、美的センス等があること。

(B)建築関係法規の運用能力
建築関係の法律をよく知っている。それによって適法かつ、より自由な計画が出来ること。又役所窓口との折衝能力が高いこと。

(C)コスト管理能力
示された予算内で、バランス良くコストを配分し、調整する能力。

(D)工事監理能力
工事を良く把握しており、設計図通りに施工されていることをチェックする能力。

です。よって、この4項目について能力の高い設計事務所が、注文住宅の設計において優秀な設計事務所ということになります。
これ以外にも色々なサービスを行っている事務所がありますが(不動産斡旋や、ローン計画サポート、工事職人の手配など)、これらのサービスはあくまでサブ的な存在です。色々キャッチーなサービスを提示しないと他と差別化出来ない、という問題から色々なサービスを行うところが増えてきました。しかし、これらに目を奪われて肝心なところを見誤ると、結果的に良くない家が出来てしまいます。

■設計事務所の種類

大きく分類すると3つの様態があります。

(1)下請け型 設計事務所
ハウスメーカーや、不動産屋に付属している、又はその下請けを仕事の中心にしている設計事務所です。パターン化したレディメイド的な内容の仕事を迅速にこなすのは得意ですが、個別のクライアントに合わせた設計や、じっくり時間をかけて詰める設計は不得意です。

(2)組織型 設計事務所
企業型の設計事務所で、複数の建築士(20人程度~1000人程度)が在籍し、物件ごとに社内でチームを組んで、それぞれのチームの裁量で設計を進めていくスタイルの設計事務所です。利益率の低い住宅はあまり設計せず、ビルや集合住宅、施設などの規模の大きな設計を得意とします。設計の質は、担当者のレベルによって決まります。作風も担当者によって様々です。

(3)アトリエ型 設計事務所
設計者の名前が事務所名になっているなど、誰の責任による設計なのかをはっきり打ち出しており、代表者自らが設計をする事務所です。オーダーメイドの住宅設計を得意としているのは、多くはこのアトリエ型設計事務所です。事務所によっては住宅以外の建物も設計します。設計の質は、代表者の方針や能力で決まります。(当事務所もこのアトリエ型 設計事務所に属しています。)

■設計事務所の時間の使い方

アトリエ型 設計事務所の代表者の仕事は3つ

(1)建築設計の本業
(2)事務所経営(営業・広告活動など)
(3)設計以外、その他のサービス

場合によっては代表者の仕事は、(2)事務所経営と(3)その他が90%で、(1)本業の設計は10%ぐらいしか関わらない、というところもあります。家が完成するまでに使う費用と時間は有限ですから、出来る限り(1)本業に専念してくれる設計事務所が良いのは当然です。ですので、営業・広告活動も大切な仕事ですが、代表者がしっかり計画を考え、図面を描く時間を確保し、全ての図面をチェックしているかどうかを確認することが重要です。

その為には、仕事の数を無闇に増やさない。という事が大切ではないかと思っています。仕事の数が多すぎると、結果的に一物件あたりに掛けるエネルギーが少なくなって、薄味になってしまいます。又、それに付随して本業以外の営業やサービスもどんどん増えていくからです。一つ一つ、丁寧に作ることは物づくりの基本だと思います。