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「 上京の織屋建て長屋 」が京都デザイン賞2018に入選いたしました

お知らせ




「 上京の織屋建て長屋 -住み継げる町家- 」が京都デザイン賞2018に入選いたしました。
クライアントならびにこの計画に携わり、ご協力頂いた皆様にお礼申し上げます。


「長屋型の町家」は京都市全体で、約10000軒も存在しており全町家のうちの約1/4を占めます。しかし、いざ真面目に改修しようとすると、技術的にも法的にも金銭的(補助金制度)にも不利になります。特に耐震改修が非常にやりにくいと感じています。今回の案は、その状況を何とか乗り越える方法を模索したものになります。




ーーー今回の案の説明ーーー

■京都市内に10000軒以上存在する長屋型町家の耐震補強の問題
本計画建物は西陣に位置する3軒長屋のうちの1軒のリフォームである。長屋はそれぞれ所有者が異なるため、そのうち1人の住人が構造補強をしたいと考えても、構造体の1/3にしか手を加えることが出来ないのが現実である。長屋型町家の耐震補強が進まない原因の1つにもなっていると言える。

■3軒同時の構造調査と補強計画
そこで、その打開策として考えたのが3軒の現況の構造調査を行い、将来いつかするであろう構造補強計画を3軒同時に検討することであった。現時点では1/3のリフォームでしか無くても、将来的にどの部分を補強すれば長屋全体の強度が増すのかが分かっていれば、少なくとも可能性は開けると考えた。幸いにも、他の2軒にも賛同を得て、構造調査を実施し、限界耐力計算による全体の構造補強計画を作成することができた。

■個人所有の町家から長屋型町家保存の新しい試み
今後、この計画書を元に随時、耐震改修され、安心して住み継ぐことができれば、個人的要望から始まったリフォーム計画から、長屋型の町家を未来へ残す新しい一つの解決方法になると考えている。

■築117年の町家とインテリア
伝統的な町家の良さを残しながら、クライアントが要望する現代的生活の実現を試みた。外観は町家の特徴を色濃く残していたため、修復をおこなった。外壁や隣家との界壁は断熱材と遮音板を封入した大壁構造とした。そして、その仕上げは100年以上の年月を経た構造体に負けない素材の強さ、素朴さを持ったものとして「ガルバリウム鋼板」と「和紙」を新たに採用している。一方、間仕切り壁については真壁構造のまま柱を現しとし、既存土壁の上に黒漆喰塗りとして伝統的な町家の良さを生かしている。
また、過去の改装で完全に塞がれていた奥の間の吹抜けを元に戻し、伝統的な織屋建ての空間を再生することによって、ダイナミックな広がりのある空間となった。