窓緑の家
作品
3階建ての店舗併設住宅です。
設計を依頼された際に建っていた既存の花屋は、小さな空間に多くの植物が溢れるばかりに並べられ、鉢や小物に至るまで店主が丁寧に選んだものと組み合わせられて独特の雰囲気を発していました。
それは華やかな色とりどりの花に囲まれた非日常の風景では無く、日常の生活空間に緑や花を添えて暮らすことの豊かさが感じられるような素朴な質のものであり、とても好ましいものに感じられました。また、花屋はインターネットでの販売が中心であり、店舗は広い作業スペースのある倉庫のような空間でよいとの店主からの言葉がありました。
このことによっていわゆる一般的な花屋らしさというものに縛られず、店舗から住居へと溢れる緑のある空間で、家族が毎日を暮らせる場所であってほしいとシンプルに考えることができました。
敷地は大通りから少し東に入った閑静な住宅街に位置しています。その場に店舗併設住宅としてどのような建ち方がふさわしいか考えました。また、敷地の南側は日当りがよく朝から日が沈むまで陰になる時間がないということもあり窓に差し込む強い日射をどうコントロールするか、また敷地周辺には全方位が殺風景であり、窓からの景色をどうつくるかもポイントでした。
そこで道路に面する南側の大きな窓に出窓状の花台を設け緑化する場所としました。そして前庭や花台の植栽は専門家であるクライアントにお任せすることよって、ブルーベーリーやハーブ等が植えられ、木々が美しい緑豊かな住宅となりました。まぶしい太陽の光はおだやかな木漏れ日となり、花台から溢れ出る緑は店の前を行く人々の目を和ませています。
街並みに潤いを与える役割を担えれば、近隣の住民にもこの建物の姿が好意的に感じられるのではないかと考えています。