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京町家のリフォームについて ♯02

建築



(京都市京町家施策集)


少し間があいてしまいましたが、京町家の調査編です。
調査とは基本的に現地調査のことを示しますが、京都市における京町家の現況についても簡単に紹介してみたいと思います。
京町家の厳密な定義はありませんが、一応京都市の基準によると、

■京都市内で「戦前」に建設された、伝統的な軸組木造の建物で、瓦葺き、平入り(屋根の低い側が建物の正面になっている形式)の大屋根をもつ。
■大戸、木枠ガラス戸、木格子、虫籠窓(むしこまど)、土壁、漆喰壁など京町家の特徴を有する外観。
■間取りにおいて、通り庭、続き間、坪庭、奥庭、などがある。

また、現在の京町家の原形が出来たのは江戸時代中期。現存しているものの大半は明治時代以降のものだそうです。幕末に多くが火災で焼失したらしく、江戸時代のものは全体の約3%ということです。

平成22年の調査時点で京都市内には約48000軒の京町家が存在しているということですが、1年につき1.5~1.8%づつ取り壊されているという調査データがあるので、毎年720~860軒が消失していることになります。現在平成27年なので、この想定によると計算上はこの5年で4000軒ぐらいは消失しているのではないかと思われます。ということは現在で44000軒ぐらいでしょうか?

数字で考えると、凄い勢いで無くなっていますね。理由は明確にはなっていませんが、相続上の問題や、老朽化で維持修理費用が大変なこと、耐震や防火に不安があること、など色々あると思います。市街地中心部においてはマンションやビルに建て替えた方が収益性が高いことも取り壊しの主な理由だと思います。

興味のある方は、詳しくは京都市の平成20・21年度「京町家まちづくり調査」記録集のサイト
http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000089608.html
をご覧になって下さい。

今回リフォームする物件は、木枠ガラス戸、木格子、虫籠窓、土壁、漆喰壁など、京町家の特徴をほぼ全て網羅していると言って良い建物です。他に現地を調査して、分かったことは

■「織屋建て」である。これは、西陣地区に特徴的な町家の形式で、自宅で機織りをする職住一体の住居形式で、1階の奥の間が土間になっていてそこで昔西陣織りの布を織っていたことから名付けられました。
■3軒の連棟長屋形式である。これは、界壁を共有するかたちで、3軒の住宅が並んで建っている形式のことです。京町家の中では「長屋型京町家」という分類になります。

この長屋型京町家というのは、意外と多くて京町家全体の中で約28%もあり、4軒に1軒は長屋型であると言えます。割合から計算すると約13500軒も存在します。
この長屋型という形式は、元々は1人の大家さんが長屋1棟を所有していたのですが、時間の経過と共に所有権が売買されて現在では1棟の中にある複数の住戸をそれぞれの住人が所有していることが多くあり、構造補強のリフォームを行う際に問題が発生します。

どういうことかと言うと、連棟長屋は構造的には1棟の建物なのですが、その1棟の建物に3世帯の別々の所有者が居る状態です。構造補強のリフォームをしようと思っても、3世帯の所有者が全員揃ってリフォームのタイミングを合わせなければ、耐震補強は十分に出来ない。ということになります。現実的には、リフォームしようと思うタイミングが、3軒一致することはまずありえません。




そこをどうするか?そして、保存改修をどう進めて行くか?というのも問題であると感じます。長くなりましたので、また次回調査編の続きにてご紹介したいと思います。
(つづく)