Works /
紫竹の家 House in shichiku

「音楽と植物と本に囲まれて暮らす家」

延べ床面積約28坪、密集した住宅街に建つ小住宅です。
設計当初に出されたクライアントから私たちへのリクエストは「音楽と植物と本に囲まれて暮らす家」でした。生活する上での楽しみを最大化出来るような住宅を、と言い換えられるかもしれません。
私たちも常々そのような住宅を設計したいと願っているのですが、打合せの度に音楽、植物、本、ご家族についての様々なエピソードをお聞きしながらイメージ膨らませつつ案を固めていきました。

まず、植物を眺め育てることを楽しめるような、十分な明るさと広さのある庭を設けることが重要だと考えました。
そのために、庭の風景が室内からクリアに見えるように木製の窓を丁寧に設計しています。窓は絵画の額縁のよう存在で、鑑賞する対象である庭が美しく感じられるように枠はシンプルに納め、庭の塀は植物の背景として馴染むように無彩色のフレキシブルボードを用いています。庭には杉苔と枝垂れモミジが植えられていますが、当初より「苔が主題の庭」で、というご主人の提案もありつつ具体的なイメージについては一緒に園材屋めぐりをし、樹木の大きさや配置を相談しながら決めました。

音楽と本については、それらを家族と共有しつつ楽しめるスペースが大事だと考えました。
楽しみを共有するには、家族の共用スペースとしての廊下や階段、吹き抜けなどの部屋と部屋を繋ぐ中間的な空間が重要になります。主寝室と子供部屋の間にある2階の廊下には造り付けの本棚とベンチを設けました。吹抜けを通してリビングから本を読む家族の姿と本棚が眺められる構成としています。また、ピアノ、ギターやレコードプレイヤーの音は吹き抜けから家全体に響きます。
吹き抜けにあるトップライトから差し込む光は時間の移ろいや天候の変化を知ることができます。夜には月の光が差し込む日もあります。音楽や本を楽しむ空間は、集中して籠もれるような閉じた空間も魅力的ですが、自然の変化や家族の気配を感じられる広くて開放的な空間も良いのではないかと思って設計しました。

そして、上記の南庭(苔庭)や吹き抜け、本棚のある廊下は全てダイニングキッチンを中心として連続的に構成されています。それは、同時に家族が集まることが一番多い場所がダイニングキッチンだと考えたらからです。一緒にご飯を食べながら、庭木を眺め、自然の変化を感じ取り、音楽を楽しんだり本を読んだりしながら毎日を過ごせる空間があることが共同生活を営む家族にとっては重要ではないかと、改めて思っています。
所在地 / 京都市
主要用途 / 住宅
規模 / 地上2階
主体構造 / 木造軸組工法
構造設計/ 下山建築設計室 下山 聡
施工 / 株式会社 竹内工務店
写真 / 市川 靖史