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「たる源」の桶

建築




昨年竣工した「花園町の家」のお客様に追加設計のご依頼を受けて伺い、そこで浴室用の新しい「桶」を見せて頂きました。京都では有名な老舗の「たる源」の風呂桶です。実は初めて見たのですが、一瞬で心を奪われるとても美しい桶でした。

まず、材料のマキが厳選されており、木目の揃い方や色、質感に至るまでほぼ完璧な材だと感じました。これだけの良材を使うのは小さな桶用の材料だから可能であって、沢山入手して大きなものを作るのは難しいと思います。また、継ぎ目やエッジの仕上げが手に馴染むように、触覚を研ぎ澄まして丸みをつけて作られています。小さな桶ですが、感覚を触発される良い作品でした。

これを使って頂く浴室がこちらです。




床と腰壁は秋田県産の十和田石を使っています。十和田石は伊豆石と並んで、日本の浴室や温泉の床に使われている代表的な素材です。特徴はとても足触りが良くて、触覚的に柔らかく、お湯で濡らすととても綺麗な深い青緑色になります。また、壁と天井は国産ヒノキの無節貼りとしています。さすがにたる源のマキ材に比べると平凡な材に思えますが、これでも建築用としてはかなりの良材です。ここまで来ると浴槽もヒノキなのでは?と思いますが、お手入れのし易さという点で大変ですのでTOTO製を使っております。ちなみにヒノキの壁面は、メンテナンス性は大変優れております。

一生懸命考えて作った浴室ですので、その中で使う「桶」もしっかり選んで頂いたことが大変嬉しいことでした。また、人と物と空間がしっかり調和することが大事なことだと改めて感じました。

現在、新たなご依頼によりこの浴室に設置する「浴室用の椅子」をデザインしております。「浴室」「桶」「椅子」の3点が揃ったときにブログにてご報告させて頂きたいと思っております。